御手にゆだねます

ルカによる福音書23章44~49節

澤田 武師

主題聖句 「イエスは大声で叫ばれた。『父よ、わたしの霊を御手にゆだねます。』こう言って息を引き取られた。」 ルカによる福音書23章46節
 この日の午前9時、イエス様と二人の犯罪人がゴルゴダの丘で十字架に着けられました。やがて、昼の12時ごろ、全地が暗くなり、それが3時まで続きました。暗闇の中で十字架刑は続いています。共観福音書では神殿の垂れ幕が真ん中から裂けたことが記されます。マタイは「地震が起こり、岩が裂け」と記します。この世から光が消え、地が裂け、神殿の垂れ幕が裂ける。イエス様の死は、この地上の全ての物を動かしました。留まっていることはできません。ここからまた新しい使命が与えられる時です。ここに、神様の摂理が進んでいく様子が現われています。午後3時、「父よ、わたしの霊を御手にゆだねます。」イエス様の大声が暗闇に響きます。
 この叫びは、本来はユダヤの母親が子どもに教える最初の祈りであって、詩編31編6節の御言葉です。それは暗闇を怖がらずに眠りにつくための祈りでした。今、誰にでも聞こえる大声でイエス様は叫ばれます。それは私たちの罪の暗闇を滅ぼして、新しい始まりを信じる叫びでした。
 すぐそばで十字架刑を見守っていた百人隊長はイエス様の姿を見、その言葉を聞いて「本当に、この人は正しい人だった」と信仰を告白します。罪のない人を死なせてしまった罪の告白でもあり、神を神と信じて賛美する、新しい始まりでもありました。
 本日から受難週が始まります。主の十字架に、興味本位で集まった人々、仕事の一つとして十字架刑の最初から最後まで側に立った兵士たち。そして遠くに立ちすくむ女性、逃げ去って隠れた弟子たち。私たちは、ゴルゴタのどこにいて、何を見るでしょうか。聖書には、群衆が胸を打ちながら帰って行ったことが記されます。イエス様の十字架の意味を理解まではできなくても、心を揺さぶられた人々が確かにいたのです。
 私たちが主の復活を信じていることはまことに幸いです。主の復活を待ち望みましょう。
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