天秤にかける

マルコによる福音書12章13~17節

澤田 武師

主題聖句 「イエスは言われた。『皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。』」 マルコによる福音書12章17節ab
 マルコによる福音書11章20節~13章37節、そこには受難週三日目、火曜日の出来事が記されています。12章13節「さて、人々は、イエスの言葉じりをとらえて陥れようとして、ファリサイ派やヘロデ派の人を数人イエスのところに遣わした。」ここにある人々とは、ユダヤ教の指導者たち、祭司長、律法学者、長老たちです。彼らはイエス様を捕らえるためには手段を選びません。
 ローマの支配を認めないファリサイ派はローマへの納税を信仰的理由によって拒否します。一方ヘロデ派はヘロデ王家復興のために現実を受け入れて納税を認めています。相容れない両派ですが、彼らの信仰と生活において、イエス様の存在は共通の脅威となっています。人々が「皇帝に税金を納めるのは、律法に適っているでしょうか。」と問いかけると、イエス様は皇帝の銘と肖像が刻印されているデナリオン銀貨を持って来て見せなさいと命じます。
 「皇帝」と言う名は、世にあって神様の御心を示すために用いられる人に与えられるもの。皇帝の名によって、平和が守られ、日常生活が与えられ、生活も豊かになって行く。日常で得たものは、日常に返せばよい。「皇帝のものは皇帝に返せ」と、イエス様は地上の名の権威に従うことを命じます。
 神様はこの世界を造られました。そこに、この世界を支配する者として人間が造られました。人は神様に託されて生き物に名を付け、この世に社会秩序を作り上げました。この世の名は全て神様の御心を表したものです。人は社会を支えるために、社会に奉仕します。イエス様は「神のものは神に返せ」と、神様の名の権威に生きることを命じます。「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。」このお言葉は片方だけでは決して成り立ちません。
 パウロは「人は皆、上に立つ権威に従うべきです。神に由来しない権威はなく、今ある権威はすべて神によって立てられたものだからです。」(ローマ13:1)と記しています。この世に属する皇帝に何を返すのか。神様の権威に生かされる信仰者として神様に何を返し続けてゆくのか。生涯、正しい答えを求めていきましょう。
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