共に喜び祝え

申命記16章9~17節

澤田直子師

主題聖句 「あなたの神、主があなたの収穫と手の業をすべて祝福される。あなたはただそれを喜び祝うのである。」 申命記16章15節bc
 申命記は、モーセの告別説教とも言われ、モーセが自身の死を前に民に言い残していく言葉で、「申命」とは「もう一度命ずる」という意味です。16章は、ユダヤの三大祝祭と言われる、「過ぎ越し祭」「七週祭」「仮庵祭」の意義と祝い方を教えています。このうち「過ぎ越し祭」は出エジプトを記念した宗教的な行事ですが、定着したのはヨシヤ王の時代以降と言われています。
 「七週祭」「仮庵祭」は収穫感謝の祭りで、ユダヤ教の成立以降から民族の祭りとしてあった収穫感謝の行事に、ユダヤ教的な意義が付け加えられて今日に続いているものと考えられます。
 「七週祭」は今なら6月の初旬から中旬、パレスチナでは小麦の収穫を祝う頃、新約・使徒言行録ではペンテコステとして教会の誕生の日に位置付けられます。「仮庵」はぶどうやオリーブの実の収穫、絞る作業の終わりを祝う祭りです。畑が家から遠いので、仮小屋を作り寝泊まりして農作業をし、それが無事に終わって、仮小屋を片付けて家に帰ることを喜ぶ祭りです。農業従事者が少なくなった現代でも、ユダヤ教の人々は木の枝で仮小屋を作って、泊まったり食事をしたりするそうです。
 16節以降では、イスラエルの男子はこの三大祝祭にはエルサレムに詣でなければならないとありますが、それではあまりに負担が大きく、生活が成り立たないので、次第に3つのうちの1つは、一生に一度は、エルサレム近郊に住む男子は、と緩められていきました。
 これらの祭りの本来の意義は、14節にある、「共に喜び祝う」ということにつきます。聖書は「共に」ということを強調します。神の救いが人を差別しないように、人の祭りも、差別をせず共に喜び祝うことが目的なのです。ネヘミヤ記8:10「主を喜び祝うことこそ、あなたがたの力の源である」すべてを備え祝福してくださる神様への感謝、分かち合う隣人がいる喜び、喜び祝うことによって心の内に与えられる力、この三つの喜びが収穫感謝です。
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