マリア、恐れるな

ルカによる福音書1章26~38節

澤田 武師

主題聖句 「すると、天使は言った。『マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。』」  1章31節
 神が人間としてお生まれになる。誰が神のご計画としてイエス様がお生まれになると思ったでしょうか。誰が神のご計画の当事者になることを予想したでしょうか。クリスマスは人間の目からは突然始まったように思えました。聖書は実際に関わった者の戸惑いや、驚きや、悩み苦しむ姿を記しています。それは人間には理解も想像も出来ないことが事実となった「恐れ」です。
 天使はマリアにも「恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。」と語られました。マリアは突然母になることを告げられます。ヨセフと婚約をして、これから将来を共に歩む者を得た喜びは大きかったでしょう。しかし、その喜びは「恐れ」に苦悩に変わりました。
 マリアは特別な出来事であると理解しようとしますが、今はどうしても受け入れられません。「どうして、そのようなことがありえましょうか。」ここにマリアの「恐れ」があります。「主があなたと共におられる」この天使の約束は、神からの恵みです。しかし、この恵みを生涯にわたって信じて行くことには「恐れ」を抱く時も含まれています。
 「恐れ」とはギリシア語で「フォボス」という言葉です。「フォボス」という言葉自体は、中立的であり、用いられ方によって悪い意味にもなり、良い意味にもなります。
 クリスマスの出来事は、私たちにその全ては到底理解できません。それは、神の御心によって備えられた出来事だからです。しかし、ハッキリ言えることがあります。クリスマスを担った者たちの内にはそれぞれ「恐れ」があり、それを神は恵みに変えられました。彼らの恐れが、「真の信仰者」の証としての「畏れ」「かしこまる」となったことです。クリスマスは世の恐れを「真の平安」に変えてくださるために神が備えてくださいました。クリスマスを待ち望みましょう。