旅の終わりの朝

ヨハネによる福音書21章1~14節

澤田 武師

主題聖句 「イエスは、『さあ、来て、朝の食事をしなさい』と言われた。弟子たちはだれも、『あなたはどなたですか』と
        問いただそうとはしなかった。主であることを知っていたからである。」  12節

 ヨハネによる福音書では、復活されたイエス様が弟子たちと再び出会ってくださったのは、ティベリアス湖畔であったと記しています。以前この湖の漁師だった弟子たちにとって、この朝の出来事はイエス様と一緒に歩んだ三年間を思い出させるように進んで行きます。「わたしは漁に行く」ペトロは生活の糧を得るために漁に行きましたが、何もとれませんでした。イエス様は失意の中にある弟子たちに、奇跡をもってご自分を現わされました。     
 3節~6節の出来事は、ルカによる福音書5章のペトロの召命記事の内容と似ています。ルカ福音書では「沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい」と、復活のイエス様は「網を打ちなさい。そうすればとれるはずだ」と、生涯に2度、「漁をする」ことをペトロに命じます。イエス様は私たち一人一人にも「網を打て」と、命じておられます。イエス様の御旨であると信じても「ここで網を打つのか」と、戸惑いを感じる時があります。しかし、信じ従った者だけが、イエス様が備えてくださった糧を得ることができるのです。
 湖畔にはイエス様が用意してくださった朝ごはんがありました。ここに二つ目の奇跡があります。イエス様のお言葉が、信仰の糧を生み、その糧が、弟子たちの空腹を満たす肉の糧となりました。ヨハネ福音書は5千人の給食の時、一人の少年が献げたパンと魚が、豊かな糧となったことを記しています。献げられた糧は小さな物でありましたが、イエス様が誰にも不足なく、豊かに増やしてくださいました。「さあ、来て、朝の食事をしなさい」と、弟子たちはイエス様の食卓へと招かれます。ヨハネ福音書はイエス様が復活された最も確かな事として、迫害を逃れ、豊かな糧を与えられた朝の出来事を証ししています。しかし、弟子たちはここに留まっていることはできません。弟子としてイエス様と共に歩んだ旅は終わりました。ここから、新たに使徒として世界中に散らされて行くのです。私たちの生涯の旅が終わる時まで、復活のイエス様を証しする者として歩んで行きましょう。
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